オフィスビルのBCP対策

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 BCPとは"Business Continuity Plan"の頭文字をとった言葉で「事業継続計画」を意味します。
 台風や地震、集中豪雨などの自然災害や、テロなどの不測の事態が起こった場合、事業への損害、従業員や来訪者の生命の安全を守り、被害を最小限に抑えるため、企業の中核となる事業を継続もしくは早期復旧させるための方法や体制などを取り決めたマニュアル(=BCP)を策定して、緊急時を想定した訓練を実施することが重要です。
 オフィスビルも、免震・制震などの耐震性能や、非常時電力供給、医療・防災用品・非常食の備蓄など、ハードやテクノロジー面から多面的にBCPサポートを強化するビルが増えています。非常事態の際、事業や従業員を守る重要な役目となります。

オフィスビルのBCP対策

  • 耐震性能(制震や免震など)
  • 非常用電源(非常用発電機・複数回線受電方式など)
  • 上下水と給排水設備の維持
  • 備蓄品(食料品・飲料水・医療品・防災用品など)

  近年竣工した大規模オフィスビルではこうしたBCP対策を備えているケースがほとんどです。

オフィスビルのBCP対策事例① KANDA SQUARE(千代田区)

 たとえば、千代田区神田錦町にあるKANDA SQUARE(2020年2月竣工)では、地震対策として、3つの免振部材を採用した免震構造により地震の揺れを大幅に低減。オフィスビルの構造としては最高グレードの、耐震グレードS(防災拠点や拠点病院などの機能維持が必要とされる部類)の耐震性能を有します。
 電力供給の面では、通常時3回線の受電方式を採用しており、それに加え予備線を1回線確保しています。また停電時にはビル側備蓄の重油での非常発電により72時間、都市ガスを燃料とする非常発電機は最大15日間稼働可能な電源供給設備を備えています。これらにより、ビル内の空調、照明、電源の供給をバックアップします。それに加え、テナント用の非常用発電機設置スペースも確保されています。
 また、上下水が被災した場合、飲み水は約半日、トイレ等雑用水は3日間の利用が可能です。

オフィスビルのBCP対策事例② ミュージアムタワー京橋(中央区)

 もう一つ例を挙げると、中央区京橋にある「ミュージアムタワー京橋(2019年7月竣工)」では、大震災発生後の建物使用継続を可能とする国内最高クラスの免震構造や、基礎を一般的な支持地盤のさらに深部の強固な層との直接基礎が特徴です。
 電力供給の面では、特別高圧2回線受電方式を採用しており、万が一2つの受電系統の内ひとつが停電になったとしてももうひとつの受電系統を継続することができ、停電のリスクを抑えています。
 また、万が一の停電時でもビルに設置されている非常用発電機により、72時間以上の電力供給が可能です。ミュージアムタワー京橋の特徴としては受変電設備、非常用発電機などの電源設備を中間階(8、9階)に設置しており、洪水や津波などの水害発生時においても安定した電力供給が可能な設計になっています。
 さらには、帰宅困難者向けに非常食や飲料水などの食糧品などを3日分備蓄する防災設備倉庫を館内に設け、災害発生後の館内でも一時避難生活に対応できるようになっています。

 最後に、今後竣工予定の超大型のオフィスビルの例を見てみましょう。


メブクス豊洲((仮称)豊洲六丁目4-2、3街区プロジェクト オフィス棟)の例

 豊洲エリアに2021年8月末竣工する、超大型オフィスビル複合施設である「メブクス豊洲」では、節電・小エネ[eco]と事業継続[BCP]の両立をめざした「ecoBCP」を掲げています。
 平常時から節電と省エネ対策をマネジメントすることで、非常時にも効率のよいエネルギー確保ができるというものです。 建物の構造を見てわかるように、窓開口・吹抜による自然採光と換気が特長です。
 また、建物内には地域冷暖房施設(DHC)とコージェネレーションシステム(CGS)により、隣接するホテル棟とのエネルギー融通をはかり、災害時にも効率のよいエネルギー供給を実現。オフィス専有部・共用部、帰宅困難者受入エリアなど、停電時には3日間にわたり電力を供給します。

関連:メブクス豊洲 空室情報(当社サイト)
参考:メブクス豊洲(仮称)豊洲6丁目4-2街区プロジェクト(清水建設)

 また、東京駅前の常盤橋プロジェクト(2027年度 全エリア竣工予定)や、八重洲口駅前の3地区(※)の再開発事業では、ターミナル駅前の大型ビルという立地的・規模的特性を生かし、帰宅困難者の一時滞在施設や広場の活用が盛り込まれています。

※八重洲二丁目北地区(2022年8月竣工予定)・東京駅前八重洲一丁目東B地区(2025年竣工予定)・八重洲二丁目中地区(2025年度竣工予定)

TOKYO TORCH(トウキョウ トーチ ※常盤橋プロジェクト)の例

 大手町・丸の内・八重洲・日本橋の結節点である常盤橋エリアに建設中の大規模再開発プロジェクト「TOKYO TORCH(トウキョウ トーチ)」では、大規模ホールの防災活用のみならず、広場空間に、大型ビジョンやWi-Fi・多言語対応ラウンジ・炊き出し対応・マンホールトイレなどの災害対策機能を実装予定。広域の防災情報収集のためのアンテナ設備も設置予定で、災害時の混乱を見越した情報共有の仕組みづくりも考慮されています。
 また、電力供給の面では、ビルに自然エネルギーを活用した発電システム(太陽光・風力発電・水力発電)も構築される予定です。

参考:都市再生特別地区 大手町地区(D-1街区)都市計画(素案)の概要(2020年9月更新版)
参考:東京駅前常盤橋プロジェクト特集ページ(三菱地所)


東京駅八重洲口のミクストユースの再開発の例

 「東京ミッドタウン八重洲」など建設中の東京駅前八重洲口再開発プロジェクトの計画によると、帰宅困難者受け入れスペースと備蓄倉庫の整備(約3300人相当)、医療施設との連携、多言語での災害関連情報の発信、さらには駅前バスターミナルを活用した物資輸送や帰宅困難者の代替輸送の検討など、こちらもハード面のみならず、街区を超えた連携など、ソフト面での対策も練られています。

 さらに、開発区域内外にも「電気」と「熱」を供給するエネルギーセンターの設置も計画されており、エリア全体の災害対策の中心拠点となることを見据えた計画となっています。

参考:「八重洲二丁目北地区第一種市街地再開発事業」着工 ~東京駅前における大規模ミクストユースプロジェクトが始動!交通結節機能の更なる強化へ~ 2018年12月3日 三井不動産株式会社


 このように利用者数の多い大型ビルでは、事業存続はもとより、人命と安全の確保、周辺エリアの防災拠点となる事を想定したビルも増えてきています。

 事例に挙げた大型オフィスビルには、企業のBCP対策のヒントになるポイントがいくつもあります。万が一全員テレワーク中に、自宅や外出先で被災した場合にはどのようなリスクがあるでしょうか。電源不足や、通信手段、業務指示や情報共有など、これまでにない困難な状況に陥る可能性も容易に想像できます。

 オフィス移転のビル選定の際には、企業を取り巻くリスクが事業継続性にどのようなメリットやデメリットをもたらすかどうか、まずはリスク評価とビジネスへの影響分析を行うことが重要です。

 日本では、今後発生が懸念される大型地震だけでなく、近年毎年のように発生する記録的な集中豪雨、大型台風など、多くの災害に備えておかなくてはいけないのが現状です。

 重要なのは、オフィスビル選びそのものがBCPの対策となるということ。移転を検討する際にはこのような対策を施しているオフィスビルを、検討の選択肢に入れることをお勧め致します。

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